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2011.08.28 (Sun)

ヨリックの散歩道 金澤022 芝生

No.021で、「ステッセルのピアノ」の演奏風景の写真と一緒に「ラ・フォル・ジュルネ
 熱狂の日音楽祭」のことを書いておきましたが、これは金澤とか新潟、東京など、
ごく一部の町の人しかわからないでしょうから簡単に書いておきます。
フランス地図
La Folle Journee 
という音楽祭は、

1995年、フランス北西部の
港町、Nantes ナント 
で誕生しました。
 左の地図、印がナントの町。
(パリ は右上隅の1/3ほど
の所。矢印を入れておきました)


 この音楽会は、一流の演奏を低価格 (例えばフランスでは5~22ユーロ)
 で提供し、明日のクラシック音楽の新 しい聴衆を開拓する、というコンセプト
 でスタートしました。
 年ごとにテーマやジャンルを決めておいて、短時間のコンサートを、朝9時~夜11時、 
 いろんな会場でいっぱい開く、というものです。ポルトガルやスペインでも開催
 されるようになりましたし、日本では2005年から東京、2008年から金澤、
 2010年から新潟・大津、という具合に広まってきたのでした。
金澤という町は、一般には保守的であると思われているようですが、芸術的な活動に
対する力のいれようは、二十一世紀美術館、という風変わりなものを町の真ん中に
大きく作ったり、ラ・フォル・ジュルネを東京に次いでいち早く開催したり、なかなか
いい所のある町なんです。

ボーマルシェの戯曲・モーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」の正式名称である
    《La folle journee , ou le Mariage de Figaro
     狂おしき一日、あるいはフィガロの結婚》
に因んでこの音楽会の名前を付け、クラシック・コンサートに対する人々の既成概念を
打破する、という気持ちも込めているようです。

つい、育った町、青春を過ごした町、である金澤の宣伝をしてしまった。

金澤時代の五木寛之のお散歩道のことを書き始めて、ステッセルのピアノで大分時間を
とってしまった。ワタクシはまだそのピアノの音を聞いたことはないのですが、
古い時代に作られたピアノですから、五木寛之はそのピアノを叩いてみて、
   …チェンバロみたいな感じの音ですね。…
という感想は自然に出たものだと思います。

五木氏のお散歩道を続けます。No.021の、如来寺横から小立野刑務所へ出た所の次から、

 …突然、左手に異様に高い煉瓦塀が、夢の中の風景のように現れる。…
の所から続いて、
 …それは風雨にさらされて、やや黒ずんだ感じの煉瓦塀だった。最初にそれを
 目にした時の不思議な印象は、今でもはっきりと憶えている。それが明治四十年に
 作られた金澤刑務所の外塀だと知ってからは、私の中にその煉瓦塀が金澤という
 町の一つの象徴的なイメージとしてこびりつき、ながく離れなかった。
 弁当忘れても傘忘れるな、と言われるくらい雨天の多い土地だ。どんより低く
 たれこめた雨雲を背景に、正確な遠近法で続く煉瓦塀は、なぜか私にカフカの小説の
 中の風景を連想させた。その刑務所の真裏のアパートの一室で、金澤での最初の
 生活を始めることになるのである。
 そのアパートは、東山荘といった。二階の一番端の部屋に私たちは住んだ。
 私たち、というのは、私と私の相棒、すなわち配偶者という表現で私の雑文の中に
 しばしば登場させる女である。…

カフカの小説、といってすぐこの刑務所の煉瓦塀を思い出す人はよほどカフカを読んでいる
人でしょう。「城」というカフカにしてはかなり長編に属する小説は、御城の周りを
グルグル回る男のお話です。出口も筋もよく見えてきません。
五木夫人となったその女は、No.013でのせた天徳院への分かれ道、下馬地蔵の付近に
あった岡病院のお嬢さんです。
別のエッセイから、

…夜、金澤へ戻って香林坊から犀川への裏通りを歩く。三十五年前にデイトをした
《芝生》という店がまだある。金沢教会の前の櫻も、ライトアップされているのに
未だ花開かず。宇都宮書店で本二冊。…
芝生と金澤教会
五木さんがこの文章を書いているのは
1996年の4月、日刊ゲンダイ紙で、
「芝生」という店(左側)も金沢教会も、
1961年にデイトをした時のままに残って
います。宇都宮書店はこの写真を写した
場所のすぐ左手にあります。金沢教会の
前の道を右に行くとすぐ竪町の通りで、
左角に「モナミ」が、そして右の方へ
行ったすぐ先に「郭公」がありました。

「芝生」は洋食屋で、カレーライスを食べるためにワタクシも時々入った店でしたが、
ワタクシはこのお店でデートをしたことはありませんでした。このお店は気が
はらなくって美味しい「洋食」を食べさせてくれます。今でも半世紀前と同じような
献立が出ます。

あまり他人の個人情報を深く追求する気持ちはないのだが、五木寛之氏とワタクシの
歩いた所は半分くらいはクロスするので、ワタクシが自分の歩いた道のことを書くと、
どうしてもこのように寛之氏の足跡も一緒に重なってしまうのです。
寛之サン、悪しからず。

五木寛之の散歩道は、これもエッセイの一部を引用させていただきましょう。

…刑務所の塀に沿って歩いてゆく。天神坂を下りて天神橋へ出る。そのあたりは
古い金澤の商家や民家のたたずまいの残った、ひなびた一画である。私は金澤の
ガイドブックに出てくるどの場所よりも、その坂の下の町並を金澤らしいと感じた。
坂の途中に椿原神社という社があり、祭の日には縁日やみこしが出てにぎわった。
その町からやや離れた所にあって淺野川にかかっているのが天神橋である。…
椿原神社
椿原神社・コンサート








これが坂の途中にある椿原天満宮です。祀ってある神様はもちろん天神様である
菅原道真。大学病院のちょうど裏手の小高い所にあるので医王山・戸室山から卯辰山、
さらには日本海まで望むことが出来ます。ここの拝殿で時々こんなコンサートを開く
ことがあって、この時ばかりは拝殿が人で一杯になるので、宮司さんは
いつもこれくらいお詣りの人があれば、とコンサート前の挨拶でぼやくのだそうです。
金澤ではどの神社でもお祭りの日には縁日の屋台が出て、子供たちの太鼓を叩く行列が
出て、御神輿も出たりして賑わったのです。
道なりに下ってゆくと、といっても天神町から材木町のあたり、2011年の7月に
ワタクシは車で卯辰山からその隣の鈴見山、小学校の遠足の時に行ったことのある、
大蛇が出るという噂のある鈴見山の大池のあたりから小立野までを走ってみたのだが、
山側環状線というような自動車道路が出来ていて、トンネルがあったりして随分
わかりにくかったのでした。だから椿原天満宮から無事天神橋までたどり着いたことに
致しましょう。古い町屋造りの建物の並んでいる通りを探して歩けば五木さんの散歩を
した時代の道を通って天神橋までたどり着くことが出来ます。
ここでいったん休憩して、天神橋の一つ上流の常盤橋のたもとにある「ごり屋」で
お食事をしましょうか。
犀川にも淺野川にも昔は 鮴(ゴリ) という魚がいました。今はあまりいないようです。
ごりをとる
左はその鮴をとっている図、
犀川の桜橋上流付近ですね。
非常にデリケートな魚で、
人間の飲めるくらいの綺麗な
水でないと生きていけない、
といいます。


誰かが「室生犀星のゴリのように三角にとがった顔」と書いていた。たいそう失礼な
言い方だが、それを読んでからというもの、ゴリという文字を見ると犀星の顔を、
室生犀星という文字を見るとゴリの三角にとがった顔が目に浮かぶ。
ごり屋・座敷

ごり屋のお座敷。

このお店は明和四年(1767)の創業で、
前田家十代の重教の頃です。

ゴリの骨酒
そしてゴリの骨酒。

このお魚は鰍(カジカ)に類する小魚で、
せいぜいで7~8㎝ほどの小魚です。
デパートや土産物店で「ゴリの佃煮」と
いうものを売っていますが、あれは
(殆どの場合)偽物で、ハゼ科の小魚で、
本物の鮴ではありません。本物の鮴は、
上の写真の骨酒の中のお魚です。

お目にかかるには多少お金が張りますが、ごり屋のお座敷へ上がるしかないようです。
昔は町内会などでみんなで川へ入ってゴリをとって、河原で大きな鍋でゴリ汁を作ったり
唐揚げを作ったりして、大人たちは酒盛りをしたらしいのですが、私が子供の時には
もうそんなことをやっている状況ではなかった。
南京陥落祝賀提灯行列、紀元は二千六百年奉祝花火大会。それからあとはご存じ戦争一色。

ごり屋では九谷のお皿や輪島塗のお椀で食べさせてくれます。
鮴の酢の物
鮴の洗い










鮴の唐揚げ
柳川鍋









左上  酢の物    右上  洗い    左下   唐揚げ    右下   柳川鍋

鮴汁
鮴の佃煮



そしてゴリ汁(上)と佃煮(右)。 


余分なことかも知れませんが、簡単に解説。
● 骨酒  強めに焼いたゴリに熱燗のお酒を注ぐ。ゴリの味がしみ出てくる。
      大きめの深皿に出る。
● 八寸  バイ貝の旨煮、フォアグラの錦蒸しと一緒にゴリの佃煮
● 唐揚  ゴリの頭を軽くコツンと叩いて、泳がすように油に入れる。
      ほかに、沢蟹、細切り昆布で編んだ丸籠にギンナンなど添えて。
● 洗い  三枚におろしたあと、小骨があるので何度も骨切りをする。
      一寸の魚に60回も包丁を入れる。
● 酢の物 ゴリの南蛮漬。唐揚げにしたゴリを熱いうちに土佐酢に漬けて十日ほどおく。
● 柳川  酒で茹でたゴリとゴボウを煮て、卵をかけた鍋。
● 汁   針ゴボウと柚子を入れた味噌汁。

いかがでしたか? 堪能できましたか?

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