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2011.12.14 (Wed)

藝術の秋 2011 三菱1号館

今度の展覧会でもう一つ見たいものがありました。ロートレック展です。
ムーラン・ルージュ・夜景
ロートレックという絵描きのことは、
ムーラン・ルージュ(赤い風車)、左の写真、
と一緒に早くから覚えていました。


戦前の詩人や小説家は、
 …フランスへ、行きたしと思へど、フランスはあまりに遠し、… 
と、半ばあきらめに似た詩を書き、パリの地図や写真を眺めて、まだ行ったことのない
パリのあれこれを空想していましたし、フランスへ留学した絵描きたちは、モンマルトルの
石段道の絵を(ユトリロが描いたように)描いて日本画壇に持ち帰りました。
フランスは、わけてもパリは、藝術家にとってあこがれの的でした。
金澤015の所で少し書きましたが、ドォデェの「風車小屋便り Lettre de mon moulin 」を
教科書にしてフランス語の勉強を始めたのも、やはり私の中にあるあこがれに似た気持ちが
そうさせたのかも知れません。半年の間に12回しか授業に出られなかった私は結局ものには
なりませんでしたが、それでも「スガンさんの山羊」という短編の冒頭部分はシッカリ覚えて
います。
M.Seguin n'avait jamais eu de bonheur avec se chevres.
Ils les perdait toutes de la meme facon : …… 
スガンさんは山羊を飼うのだがそのたびに山羊は綱を切って山へ逃げて行き、結局
オオカミに食べられてしまうというお話です。
「風車小屋便り」の中には、ビゼーの劇音楽「アルルの女」のもとになった短編の
「アルルの女」という、男を狂わせる女の話があったりして面白い短編集でした。
ドォデェの作品で一番有名なのは「フランス語の最後の授業」でしょう。ドイツ・フランスの
国境にあって、戦争のたびにドイツ領になったりフランス領になったりするアルザス・
ローレーヌ地方での怠惰な小学生のお話。でも最近はドォデェなんて小説家のものを読む
人はあんまりいないようですねぇ。

私は若い時には映画も、小説も、音楽も、フランスものを好んでいました。私もやはり
パリの地図と、映画や写真や小説などで得た知識とで頭の中にはパリの「お散歩道」の
ルートができあがっていたのです。
映画「赤い風船」を見ていても、いま風船がどのあたりの上空を飛んでいるのかおよその
見当がつくくらいパリの街には詳しかったのです。
ロートレックが愛したモンマルトルの酒場や、エリック・サティが
シャ・ノワール・ポスター
ピアノを弾いていたシャノワール(右が chat noir 黒猫のポスター)
などへ行く道筋も知っていました。
ルーブル美術館からムーラン・ルージュへ行ってみましょう。
ルーブル美術館の裏手からオペラ座通りを真っ直ぐ上がって、
オペラ座の前の広場の右手からさらに真っ直ぐ上がると
トリニテ教会があって、その右手のちょっと細い道を上がれば
ブランシュ広場に出て、夜なら上の写真のムーラン・ルージュの
ネオンが見えてきます。

ロートレックのポスター第一作はこのムーラン・ルージュのために描かれました。
ムーラン・ルージュ・ポスター

真ん中で踊っているのはラ・グーリュ。
手前に影絵のようになっている男は
骨なしヴァランタン。
この二人が花形ダンサーでした。この
ポスターが貼り出されると一夜にして
大成功をおさめ、ロートレックは有名人に
なりました。
20才頃のラ・グーリュ

右の写真は20才頃の ラ・グーリュ
La Goulue
こと
ルイーズ・ヴェペールです。


フランス語の勉強をするかたわら、(広い意味で)フランスの文化や歴史や音楽など
さまざまなことに首を突っ込む余裕があったことは今思えばなかなか有り難いことだったと
思います。
フランス語を教えに来たオジイサン教師は、ある時私たちに歌を教えてくれました。
Petit Navires ちっちゃなお船 とでもいうのでしょうか。
Il etait un petit navire (bis) Qui n'avait ja-ja-jamais navigue, (bis) Ohe Ohe !
Il entreprit un long voyage (bis) Sur la mer Me-Me-Mediterranee, (bis) Ohe Ohe !
ちっちゃなお船が地中海にのりだすのですが、途中で食べ物がなくなって、
さあどうしよう、
全部で16節からなる長い長い歌です。そうして各節のお終いで、オエ オエ!とやるわけ
ですが、声がかすれて妙な具合になって、生徒である私たちは思わず吹き出す、という
楽しい授業だったのでした。私が出席できたのはたった12回でしたが、それでもかなり
いろんなことを思い出すのです。

余分なことばかり書いてしまったのだが、こういうバックグラウンドがあって、三菱1号館
というところでロートレック展があることを知れば、どうしても行きたくなってしまうことは
おわかりでしょう。
三菱1号館・広告塔ロートレック・看板


三菱1号館は東京駅の南口の方から真っ直ぐに
皇居の方へ行った所にあります。
通りからちょっと入った所に素敵な広告塔が
あって、そこにポスターが貼ってありました。

三菱1号館という美術館は2010年の春に出来た
ばかりで、だから私の持っていた地図には
「工事中」と書いてあって、いったいどうなって
いるのだろうかと思いながら行ったのでしたが、
ちゃんと展覧会はやっていました。

これはワタクシの推測ですが、三井が日本橋の
「三井本館」(かっての三井財閥の本家のような
所)に美術館を作って、そこではなかなかいい
企画の美術展をやっていまして、私は2010年の現代童画展で上野へ行ってmoguさんの絵を
見たついでにその三井美術館で、…會津八一のうたにのせて…という副題をつけた「奈良の
古寺と佛像」という展覧会を見た時、展覧会の素晴らしかったことだけではなくて、三井
本館の建物、部屋の
三井本館・書庫扉造りや材料、家具や暖炉、そういったものの
素晴らしさに目を見張ったのでした。
右の写真、これは三井本館の展示室から展示室へ移る途中の
廊下で見かけたドアです。見たとたんは金庫のドアかと
思ったのだが、説明によると書庫のドアだそうです。
おそらく三井財閥の重要書類を入れる書庫であるには違いない
のだろうが、たいそう立派なものです。

おそらく三菱も、三井との対抗意識があって、東京における
三菱の本家のような場所に美術館を作ったのではなかろうかと
思うのです。

丸の内のそのあたりは、例えば東京駅から
丸ビル、第一生命ビルのあたりにかけて、
この前の戦争での東京大空襲の際にも一発も爆弾を落とさず、戦争が終わって、マック
アーサー将軍が占領のために日本へ来てすぐにそれらの建物を事務所に使ったことで
判るように、実に立派な建物が残っているのです。
三菱1号館美術館も、入ってみて、さすが三菱!という建物です。昔の煉瓦造りの建物、
内装も調度類も、三井本館にも負けず劣らず、という豪華さです。そしてロートレック
展も、三菱がその財力にものをいわせてジョワイアン・コレクションを250点一括で買い
取って今度の展覧会を開いたのです。全く金の力は凄いものです。   
そんなことはともかくとして…

ロートレック展はポスターばかりではなくて、若年の頃の油彩やスケッチ、非常に沢山の
リトグラフなどもあって、ポスターになる前の、ダンサーたちの写真など珍しくてとても
面白いものでした。ずっと以前に「北フランスの旅」という続き物をメールで書いて何人かの
人に読んで貰ったことがありましたが、その時、ロートレックのことも書こうと思って
ポスターのいくつかをパソコンに取り込んでおいたのだが、結局ボツにしてしまったので、
今ここでそれを出しておきます。
ロートレック・ジャヌ・アヴリル
これは踊り子ジャヌ・アヴリル Jane Avril が
一躍有名になるきっかけとなったポスター。
ポーズをするジャヌ・アヴリル
右の写真はポスターと
同じポーズをしている
ジャヌ・アヴリル。

シャンゼリゼ大通りに、
ムーラン・ルージュの
別館として開店した
「ジャルダン・ド・パリ
Jardion de Paris パリの庭」の宣伝用に作りました。


ディヴァン・ジャポネ
「ディヴァン・ジャポネ Divan Japonais (日本の
長椅子)」というモンマルトルのカフェのポスター。
当時はジャポニズム(日本趣味)が流行で、日本風の
内装と着物を着た店員が売り物の店だった。
客席にいる黒い服の女性はジャヌ・アヴリルで、こういう
スターも来るお店ですよ、と宣伝した。
エグランティーヌ嬢一座

エグランティーヌ嬢一座の
ロンドン公演のためのポスター。
足を高く上げて「シャユ踊り」を
踊るのは、左から、
ジャヌ・アヴリル、クレオパートル、
エグランティーヌ、そしてガゼルの四人。
その表情と視線はお互いにライバル心をむき出しにしているようだ。
ロンドン公演が終わってすぐ、この一座は仲間割れしてしまって空中分解したそうです。

三菱1号館には、カフェもレストランもあって、時間があったらこんな所でお茶をしたり
食事をしたり、デートをするのはいいだろうな、と思いながら薄暗くなった東京を後に
したのでした。

                         (この項終わり12月15日)

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