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2013.06.11 (Tue)

ヨリックのレコード散歩 005 ジャヌカン

Chansons Francaisesジャヌカンのシャンソンは人気があったので、当時の人もよく歌ったようだし、楽譜も出版されました。そして今でもプロ・アマ問わず合唱団がよく歌っているし、レコード・CDも沢山出ています。
左のはLPレコードでジャヌカンだけの曲集としてはかなり早く発売されたものです。
Columbia OS-925-VL 。
1961年 ACCディスク大賞受賞。

シャルル・ラヴィエル指揮
フランス国立パリ・ポリフォニック・アンサンブルの演奏。

このアンサンブルは、ソプラノ、カウンターテナー、テノール、バス、各一人ずつで、それぞれまことに美しい声で歌っているのでワタクシの秘蔵の一枚です。

1. この地方のどんな女もあたしほどに燃えていない。あたしの恋は烈しくていつわることなどできはしない。  Je ne congnois femmes en ceste contree,
2. 羽根のあるキューピッドは二つの心を一つに合わせる。そんなに強くくっつけるのは漆喰なのか糊なのか、  Ce petit dieu qui vole, qui met les cueurs ensemble. 
3. 固いはがねもダイヤもやすりも最後はボロボロに砕ける。すべては時とともにうつろうもの。だがうつろわぬもの、恋人よ、それは私たちの愛  Dur ocier et diamant et laymant,
4. さあさ、眠りすぎだよ、かわいい奥さん。起きて「ひばりの歌」をお聞きなさい。Lire lire ly fere lire li ti, Ty pi tyle liron, あの角の生えたやきもち男、寝取られ亭主は殺されてしまえ。寝取られ亭主、ぶん殴られろ、切り刻まれろ、打ちのめされろ、火あぶりになれ、
5. 私の心は悲しみの中を歩み、歓びは私のうちで死んだ。いとしい女性(ひと)は去ったのだから、もう励ましてくれる人もない。 Or veit mon cueur en grand tristesse, 
6. 私は大げさには苦しまない。何でも欲しいものは誰よりも早く手に入る。彼女を見る事だけが私の望みだからだ。  Ma peine n'est pas grande,   
7. 紅の唇に近づけてご覧。結ばれた二つのルビーと二列に並んだ小さな白銀の真珠を。甘い微笑にこの四つはほころびる。私を抱くと私の腕にあなたはぎゅっと抱きしめられて、 Susapprochez ces lebvres vermeillettes. Ces deuxrubis qui tiennent enserrez, 
8. 可愛いあの娘の小さい庭の命の甘い果実が育つころに、緑の五月の始めの日、五月の木を植えたいものだ。 Il ferait bon planter le may. Au petit jardin de ma mye, 
9. 恋人の心の中に私は読み取った、私に会うときの悲しみを。だが私は知っている。待ちこがれて彼女が悲しんでいる事を。 Je liz au cueur de ma mye,  
10. かっこうが五月にあんなに鳴くわけは恋からじゃない。私の歌に張り合って調子外れでへたくそな声を張り上げ、 Si le coqu en ce moys de may chante.  
11. 五月は緑の季節を告げ鳥たちは歌う。「あまりくよくよしなさんな」。もし私の望み通り、可愛いあの子がただ一人、裸のままに抱きしめりゃ、水仙やスミレの花の緑の衣をあの子は持つはず、 Ce may nous dit la verdure, et en leur chant ces oiseaux, 
12. いとしいあの人に会うとすぐに私の悲しみは鎮まる。抱いてあげるとキスをして、あの人は私の望む事しかしない。 Aussi tost que je voy ma mye,   
13. きけ、つわものよ。 Escoutez tous, gentilz galloys. (マリニャンの戦争。詳細省略)
14. ロワール河が覆って、魚が空にエサを求めでもしたら。黒い鳥が白い鳥に脱け変ったりしたら、そしたら私はあなたの事を忘れよう。Quando contremont verras retoune Loyre
15. あんなに美しいのに何という冷たさ! せめて一日でいいから私の忠実さを考えて下さい。 O cruaulttee loigee en grand beautee,. Quando ma douleur jamais ne sentiras.
16. おお恋人よ、あろうことか、もう会って下さらぬと言うことが、あなたに会えない間じゅう、我が身の上を嘆くということが、  Est-il possible o ma maistoresse,
17. 眠った心よ起きなさい、今日は五月の最初の日。愛の神様がお呼びだよ、鳥たちは素晴らしく歌うだろう、耳をほじってよくお聞き。 Resveillez-vous cueurs endormis,
18. 楽しい季節のこの五月、みんなで御馳走食べましょう。夜っぴて眠らず遊びましょう。踊って舞いましょ踊りましょ。そしていいことしましょうね。 A ce joly moys de may, Faisons faisons tous bonne chere. 
19. 可愛い唇よ、別れの百の口づけを、ここから出て発つその前に、別れの百の口づけを。愛が命じているように。 Cent baisers au despartir bouchettefrdiande, 
20. 口をきくたび喧嘩して、手を振り回し浮かれ騒ぐ、お尻に一つお見舞いすると、お礼にこれをあげると言って甘い口づけしてくれる。 Je eulx que ma mye soit telle,
タペストリー・村の遊び
ヨーロッパでは5月になると一斉に
花開き野は緑に茂り、そして恋の花も
咲き乱れるようです。
右の絵はロワール河周辺のシュヴェルニー城収蔵のタペストリー「村の遊び」の一場面。
五月になって、村の若者も娘もこうして外に出て踊り戯れます。
5月1日、メーデーです。
この日は野原にメイポールと言うのを立ててそのまわりでこうして楽しく踊り戯れる日です。




バグパイプ
台の上で楽士が吹いているのはバグパイプでしょうか。
こんな時フランスではバグパイプは欠かせない楽器でした。
左がバグパイプ。浜松楽器博で写してきました。

ジョルジュ・サンドはパリの南方、ロアール河のちょっと南の方、ベリィという地方のノアンという村に居を定め、そこで作家活動をしていました。そこでは田園に題材をとった小説『愛の妖精』や、『笛師のむれ』といった、可愛らしい、というか、面白い小説を作っていましたし、数年の間、ショパンと同棲もしていました。
『笛師のむれ』という小説の中ではジョセフ少年が音楽の持つ魔力のようなものにひかれてバグパイプ吹きになろうとするのです。
田園の国ベリィと、森林の国ブルボネェ、そして山の国であるオーヴェルニュのあいだでくり広げられる物語。ワタクシが読んでたいそう面白かったものだから無理矢理他の人にも勧めているのですがどんなもんでしょうか。
バグパイプの話をここに持ってきたのは、メーデーという言葉で日本人が連想するのと、ヨーロッパに暮らす人々が連想するものとの間にかなりの隔たりがあるように思ったからです。

11番目の、五月は緑の季節、という曲では、女の子が緑の衣を持つ、elle auroit la cotte verteというのですが、これはこれは女の子が草の上に寝ることを意味しますし、8番目の、緑の五月の始めの日、五月の木を植えたいものだ、というのも、緑の衣を持った女の子に私の持っている木を植えたいものだ、という意味であることは容易に推察がつくでしょう。

これはルネサンス期フランスのシャンソンだけのことではなくて、もっと古く、13世紀頃、ミンネゼンガーという人たちの歌った歌にこういうのが出てきます。
ヴァルター・フォン・デァ・フォーゲルヴァイデ walter von der Vogelweide という人の曲、

   ぼだい樹のこかげ あの草原は あたしたちふたりの寝床があったところ
   花も草も すっかり折れているのが見えるでしょう 
谷あいの森のはずれ タンダラダイ すてきな歌をナイチンゲールがうたいました。
   Unter der linden an der heide, da unser zweier bette was,
   Da mugt ir vinden schone beide, gebrochen bluomen unde gras.
   ver dem walde in einem tal, tandaradei schone sanc din nahgetal.

これは古いドイツ語で、高津春久氏訳です。フォーゲルヴァイデは13世紀頃の吟遊詩人でした。

14曲目、ロアール河が覆り、というのもすごいですね。
ソーミュール城
ソーミュール城の風景写真を載せておきましょうか。手前の川がロアール河
こんな川がひっくり返って、お魚が空へ登ってエサをとったり、カラスが脱皮してスワンに衣替えでもしたら、私はあなたのことを忘れましょう、というのですから。

ジャヌカンのシャンソンの一端をこのレコードで楽しむことが出来ます。

先ほどの ぼだい樹の木かげ 
という歌、とてもいい歌なので載せておきます。ワタクシの手書きですから読みにくいです。
ぼだい樹の木かげ


2節目以下の訳詞も載せておきましょう。

   川辺に行ってみたら いとしい人は先に来ていました
   けだかい奥方さま といって迎えてくれました
   それを思い出すといつまでも幸せな気持ち 彼は口づけしたでしょうか
   数えきれぬほど  タンダラダイ  そらこんなに口が真っ赤

   彼は花を摘んで とても立派な寝床をさきに作っていました。
   通りかかる人がいれば お腹の底から笑うでしょう
   薔薇の花のどのあたりに  タンダラダイ  あたしの頭があったかわかるから

   彼があたしのそばに寝たのを だれか知っていたら 
   まあ、とんでもない どんなにか恥ずかしいこと 彼とあたしと何をしたか
   彼とあたしと 一羽の小鳥の他は だれも知ってはなりません
   タンダラダイ  小鳥はだれにも話しません


ミネザングMinnesang のMinne は男女の愛、sang は歌、で、女性に寄せる思慕と奉仕をその内容とするものが多い。はじめはやんごとなきFrau(=Mrs.)への思いを題材にしたものが多かったのだが、フォーゲルヴァイデは素朴な恋愛詩を民謡調の旋律にのせた。純真なFraulein (=Miss)への愛を歌い、ミネザングに新しい風を吹き込んだ。
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