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2017.03.22 (Wed)

泉光院の足跡 219 殿様に拝謁

ワタクシが佐土原藩上屋敷跡へ行った時の様子は、No.138 佐土原藩上屋敷 の項にかなり詳しく書いてありますので、ここでは江戸切絵図の内「高輪邊繪圖」の佐土原藩邸付近を入れておきます。ワタクシの通った道は、JR田町駅からNEC本社の手前を左折して、慶応義塾大学の門前に出てから北の方に東京タワーが見えるのでそちらの方へ少し行ってから「綱の手引き坂」というのを上りました。地図には当時の殿様、島津淡路守の名前と丸に十の字の家紋(これは薩摩島津家と同じです)が入っています。
江戸地図島津屋敷a

十三日 晴天、此度三虚空藏御代参に付、四つ時御守札御近習衆へ差上げる、後刻御目見得被仰付御沙汰有之屋敷中御見舞に廻る、晝時父子共に御前へ罷出る様仰せ出され、直ちに上る。御座に召され其の後刻の儀は恐れあれば不記。御料理等下され暮時下殿す。

朝一番に総務部(のような所)へ行って、無事三虚空蔵へ御代参を済ませた事を、戴いてきた御札を添えて報告した。あとで殿様からお召しがあるだろうから、ということで、その間に御屋敷中ご挨拶に廻った。
お昼に、親子揃って殿様の前に出るようにと連絡があった。殿様、島津忠徹から、…ご苦労であった…というようなお言葉があっただろう。殿様と一緒にお食事を頂いて夕方まで土産話などを殿様に聞かせました。殿様に日本中の珍しい話を聞かせる事の出来る人は泉光院をおいて他にはありません。

十四日 晴天。予が家来仙衛門並に百姓鐵藏と云ふ者着の祝儀として音物進上、晝時西御殿と云ふより父子共に罷り上る様御使有之直ちに上る。暮時下殿す。

次の日には御隠居様からお召しがありました。西御殿というのは隠居した人が入る場所ですから、隠居した先の殿様、島津忠持さまからお呼びがかかって、これも多分食事をしながら夕方まで土産話をしました。
(水戸黄門という人も西山莊に引っ込んだのは隠居してからのようですね)、

十五日 晴天。奥州鹽竈(塩釜)日本第一安産の御守奥様御方へ差上げる。御座へ罷出る。
塩釜神社安産犬お守り

翌日は今の殿様、島津忠徹の奥方様からのお召しです。
塩釜神社で頂いてきた「安産御守」を奥方様に差し上げました。
右は塩釜神社の安産犬のお守。
まさか泉光院はこんなものを買ってきたわけではないだろうし、江戸時代には大体こんなものは売ってはいなかっただろう。犬のお産は軽い、というのでこういう御守が出来たのです。奈良の中宮寺(法隆寺のお隣)にも安産の御守としてカワイイ犬のお守を出していたように思います。

泉光院が前にここ、江戸屋敷へ来たのは文化十三年(1年前)でした。
この時にはまず二月廿一日に若殿様、島津忠徹の結婚式があって、お祝いの宴会など賑やかでしたし、三月四日には奥様から御雛飾りの拝見を許されたのでした。
その後、七日・八日と、…御兩所御武運長久…の御祈祷をして、その翌日、島津忠徹殿の、…殿様御儀御奉書に付七つ時御登城、今日御家督首尾克く相濟ませられ、…という具合に、江戸幕府に対して佐土原島津家の家督相続が忠持殿から忠徹殿に替わった事を報告して正式に承認されたのでした。

それから一年以上経ってこの江戸屋敷に戻ってきた泉光院は、殿様からも御隠居様からも、さらには奥方様からも、単に藩お抱えの山伏、という立場であるよりも藩の重要人物として遇せられたのでした。

十六日 晴天。谷山伴次と云へる知音より伊呂波鮓と云へるを贈らる。又立山貞八郎と云へる方呼ばれ行き夜に入り歸る。

鮓というと昔は、馴鮓(なれずし)とか、押し鮨とか、いたみやすい魚を上手に長持ちさせて食べる手段だったのだが、江戸文化の華開くこの文化文政時代になると、いまの「寿司」、つまり江戸湾で捕れた魚を生きのいい内に握ってすぐ食べる、「にぎり寿司」が人気を呼ぶようになりました。いまも東京には「伊呂波寿司」を名乗るお寿司屋さんは山ほどあるのだが、谷山さんから貰ったお鮨はどんなお鮨だったのだろうか。きっと有名なお寿司屋さんだったのでしょうね。

文化文政期になると外食が盛んになって贅沢な食事が好まれる様になった。いまも残る山谷の八百善をはじめ、平清、浮瀬(うかむせ)、百川(ももかわ)といった有名料理屋が店を開き、番付が発表されて人気をあおり、競ってそんなお店で料理を楽しみました。
八百善広重江戸高名会亭
左は廣重版画で、料亭「八百善」で食事をしている人びとの絵。八百善は今でも商売をしているし、テレビドラマにも登場する事があります。百川というお店も、古今亭志ん生や圓生と言ったといった落語家が落語「百川」で面白く聞かせてくれます。

十七日 晴天。二代目長泉院を本所分地御屋敷へ當時同家野田恰と云へるが詰合ふ故見舞に遣はす。予は増上寺内東照宮御祭禮に付御靈屋拝禮に詣づ、御靈屋日光御殿に同じ、美盡せり。御殿東向。一ヶ年に今日一日諸人參詣を免せりと云ふ。
十八日 晴天。無事。
十九日 晴天。晝時大雨に成る。野田恰見舞に見へたり。
芝増上寺東照宮

野田恰(あたか)という人も國元から江戸へ来ていて、本所にある佐土原藩中屋敷の方に行っているらしいので、息子を挨拶にやって、自分は芝増上寺の境内に中にある東照宮へお詣りに行った。右がその東照宮ですが、泉光院の時代のは先の空襲で廃墟になって、この写真の建物は新しいものです。泉光院がお詣りに行った時代の東照宮は、日光の東照宮と同様、…美盡せり。…の情況だったらしい。

この時代の増上寺は徳川家の菩提寺で大伽藍です。江戸の名所と言えば一番に名前があがるほどの名所でした。
芝増上寺錦絵
左は錦絵に描かれた増上寺風景。
手前の赤い建物は山門で、その二階にたくさん人が上がっている。この楼上から望む江戸の町並、品川沖に浮かぶ白帆、その向こうにかすむ房総半島、そういうのが手近な「観光」でもありました。
芝増上寺本堂
右は巨大な増上寺本堂。

野田恰氏は翌々日に来てくれた。
きっと積もる話もあっただろう。

廿日 晴天。家老小川帯刀殿と云へるが歸國に付首途酒等進ず。
廿一日 曇天。薩摩太守様御歸國に付拝禮に出る。夕方大雨、貞八郎殿國元へ届けの紙包み一つ頼む。帯刀殿御方へは日記四冊御頼み申す。初夜前御殿より父子共に只今御用被仰出候に付御目見得被仰付、予は印籠、倅へは腰下多葉粉遣置、其々御手づから被下御禮申上げ下宿。
廿二日 雨天。御隠居様御歸國、卯の半刻御出立、御玄関前栗石へ御暇乞いに禮拝す。
廿三日 曇天。御殿へ御隠居様首尾能御發駕被遊候御祝儀御近習迄申上る。

参勤交代の時期が近い様だ。本家筋に当たる薩摩島津家の当主島津齊興さまのご帰国のお見送りに出ます。佐土原島津家の御屋敷と薩摩島津家の御屋敷はご近所なのです。

佐土原島津家の御隠居、忠持様もご帰国になるので、一緒に帰国する家老小川帯刀殿に今までに書いた日記四冊を國元に届けて貰うために託したり、貞八郎殿には自分のお寺や親戚へのお土産物の包みを託したりしました。
御隠居様の御出立に際しては朝早くで雨が降っていたのだが…御玄関前栗石…の所で拝禮をしたのです。

泉光院も近いうちに回國の旅に出るのでお殿様から印籠を、倅二代長泉院には腰に下げるタバコ入れを、それぞれ…おてづから…下され、恐縮の至り。
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■犬のお産

つねまるさま、いつもご来訪いただきありがとうございます。
ワタクシは犬のお産に(ましてや人のお産にも)立ち会ったことがないのでわかりませんが、大変なことだろうと推察はつきます。(だけど男にとっては結局は他人事ではありますがね、と何たる無責任。)

金澤ではお祭りなどではどの家庭でも押鮨を造りました。
春にはイワシ、秋にはサバやシイラなど近海の魚です。
薄く削った昆布や、紺色に染めたえごのり、木の芽、キンカンなどあしらったりして彩を添えました。
数年前まではワタクシも造りましたが、今はもうダメ。
ヨリックです |  2017.03.27(月) 20:44 |  URL |  [コメント:編集]

■わんわんっ

こんにちは。いつもお世話になっております。

先日、名古屋の徳川美術館で雛祭り特別展示を久々に見ました。
明治のお雛様の段飾りに、わんこがごろごろしている集団がいましたの。
白黒の配色から、狆かな?とは思いましたが、ころころのわんこ親子がとても可愛かったです。

お内裏様の両脇に枕のような犬の置物があるのが多かったです。

母の実家のわんこのお産に立ち会いましたが、これで安産なら他はどんなに大変なのかなぁっと、怖くなりました。

戦禍により失われたものは多いですし、今更嘆いても始まらないとは思いますが、昔の姿を思うと感傷に浸ることしばし。

休暇明けの旅先での話は面白いですから、当時あちこちを見てきた泉光院の物語はさぞや興味津々だったことかと思います。

あ、名古屋の昔ながらのお寿司も、馴寿司です。
今どきには流行らないので風前の灯火ですが、美味しいです。



つねまる |  2017.03.25(土) 12:41 |  URL |  [コメント:編集]

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