2018-09- / 08-<< 123456789101112131415161718192021222324252627282930>>10-

2018.01.02 (Tue)

泉光院の足跡 277 花の窟

十二日 晴天。遊鬼村立、辰の刻。峠二つ越へ鬼の元村へ下る、日も西山に落る故に旅舎へ舎る。當所町數多し。
十三日 晴天。鬼の元立、辰の刻。山崎村と云ふに行く、雨に成りたる故に甚右衛門と云ふに宿す。有馬村と云ふに磁石權現とて高さ百丈の大石あり。
十四日 雨天。據なく滯在。仁王一部。

泉光院はこのあたりを全部鬼の住処だと思っているようだ。すべてに鬼の字を充てている。熊野市の市街地である木本(きのもと)へ来ても鬼の元と書いたりしている。

伊勢路の険しい峠道を越えて、七里御浜の雄大な眺望がひらけてくると、熊野速玉大社のある新宮まではあと20km。海岸から山手に入り熊野本宮大社へ向かう本宮道もこのあたりから分かれます。
獅子岩
近くの海岸に、獅子岩といって獅子が海に向かって吠えているような大岩(右の写真)があるのですが反対側から見ると何だか猿の顔に見えるのが可笑しい。
そしてもうちょっと行くと「花の窟(いわや)」、といっている巨岩が見えてきます。
花の窟1
この岩が花の窟神社の御神体で、高さが70mもあるのだが、遠くから出ないと全貌はよく見えないし、近くだと下のほうだけしか見えない。
養老四年(720)に作られたとされる『日本書紀』の巻第一、神代上、には次のような記述があります。
「伊弉冉尊(いざなみのみこと)、火神(ひのかみ)を生む時に、灼(や)かれて神退去(かむさり)ましぬ。故(かれ)、紀伊國(きのくに)の熊野の有馬村に葬りまつる。土俗(くにびと)、此の神の魂(たま)を祭るには、花の時には亦花を以て祭る。又鼓吹幡旗(つづみふえはた)を用(も)て、歌ひ舞ひて祭る」。
花の窟御神体

右は花の窟の下の方です。神社の玉垣の所。

神々の母である伊弉冉尊がおおぜいの神様を生んでから、最後に火の神である軻遇突智(かぐつち)を生む際に、陰(ほと)が焼かれて亡くなられた、と伝わる日本最古の御陵がこの「花の窟」です。
花の窟2
左は「お綱かけ神事」の様子。
岩の高い所から長さ180mの長い綱を境内の松の木に架け渡し、綱には三流の幡(はた)を吊るし、その下で花を飾り舞を舞うのです。日本書紀の記述にあるように。
左の写真、よく見て戴くとわかると思いますが、高い所にある綱の途中に幡が3つあるのが判ります。
ワタクシが世界遺産研究の会でここへきたのはもう夏も間近だったので吊してある飾りはすでに無くなっていました。
ここは国道42のすぐ傍にあるのだが、駐車場がないので、ツアーでバスで行ったのだが乗り降りにずいぶん苦労をした。(近くにコンビニとトイレはありました)

伊弉冉尊はここから黄泉の國へ赴いたのでしたが、夫の伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が妻の後を追って行った先で見た妻の姿はすでに醜い死の姿でありました。

花の窟神社の前には、「右 くまのさん道 志ゅんれい道」と刻まれた道標が立っています。
立石の道標本宮道分岐
花の窟から南へ少し行って、JR有井駅近くの、右の写真、立石道標には「右 ほんくう近道 左 しゅんれい道」と刻まれています。

七里御浜
左の写真、七里御浜。この美しい海岸を進めばまたの名を新宮と呼ばれる熊野速玉大社、熊野那智大社、そして西国三十三ヶ所巡禮札所の第一番である青岸渡寺に至る道です。しゅんれい道=巡禮道です。世界遺産研究の会のツアーではこの道を通りました。ここの海岸には碁石にする黒い石が取れるのです。採取は禁じられているのですがそれでも一個だけ拾ってきました。

「ほんくう近道」は熊野本宮大社へ行くには近道かも知れないがいくつもの峠を越さなくちゃならない険しい道。横垣峠から風伝峠を越える道。
泉光院はこちらへ入りました。ワタクシも一番最初に熊野三山へ行った時にはクルマで越えました。かなり大変な道です。クルマの免許取りたて(ワタクシは60歳を目前にして免許を取ったのです)の腕には命がけの道だった。

十五日 晴天。山崎村立、辰の刻。コウノ木村と云ふに行き托鉢の所、喜惣治と云ふに宿せよと云ふに付宿す。
十六日 晴天。神の木村立、辰の刻。峠を越へ坂本村と云ふに行き托鉢、大雨に成り據なく晝時より宿す、源藏と云ふ宅。
十七日 晴天。坂本村立、辰の刻。また峠を越へヲコシ村と云ふに行く、此村城下より宗門改め役人滯在故に又峠を越し、板屋村と云ふに行き名主武右衛門と云ふの隠宅に宿す。
横垣峠石畳道
コウノ木村は神ノ木村で、そこを発つと横垣峠。右はそのあたりの石畳道。ここを下ると阪本村です。
風伝峠亀島燈籠

下る途中に亀島の燈籠(左の写真)というのがあるのだが、こんな山中に「亀島」というのはどんな由来があるのだろうか。


風伝朝霧の山

向こうに見える霧に包まれた山が風伝峠のある山。車だと風伝トンネルというのがあって、そこへ入る道を通ればよかったのだが、知らずに旧道の方へ入ったらジグザグで下りがとても怖かった。

風伝峠法界塔

右、風伝峠の上にある法界塔。ちょっと見にくいのだが右下隅に見える四角い石がそれです。文政四年(1821)の銘があるので泉光院がここへ来た時にはまだありませんでした。ここが追分で、峠を下れば本宮の方へ向かいますし、峠を下らずに尾根道を北に進むと吉野から奈良へ向かう北山道になります。
峠を下ってヲコシ(大河内)村へきたら、キリシタン改めの役人が来ているので、泉光院のような山伏は関係ないのだろうが、昔は(今でもそうだが)役人と関わり合うのはいい感じではないから、もう一つ、通り峠というのを越えました。

十八日 晴天。板屋村立、辰の刻。小川と云ふに行く、此の川玉置川也。竹遠村と云ふより一里川上也。夫より竹遠村へ下る、予は奥駆けの時分此の竹遠村を十六遍通りし故によく知れり。夫より九重村へ下り椎瀧村安右衛門と云ふに宿す。
十九日 晴天。椎瀧村立、辰の刻。水安村より本宮川へ付き上る、道惡しき事言語道斷也。小津村暮時着、市太郎と云ふへ宿す。
瀞八丁ジェット船

峠を下りきったところが熊野川の支流玉置川(北山川・瀞八丁のある)の小川村になります。右は瀞八丁をジェット船で下っているところ。

泉光院は修験者としてこれまでに「奥駈 おくがけ」というのを16回やっている。大峯奥駈道は、吉野山金峯山寺蔵王堂を起点として、山上ヶ岳大峯山寺、大普賢岳、弥山、釈迦ヶ岳、大日岳、玉置山などを経て熊野本宮に達する険しい道で、眞言宗當山派である泉光院が奥駈けをするとこはこの順序で歩いているのです。天台宗系の本山派山伏が奥駈けをする時はこの反対に、熊野を起点として吉野に向かう事になっています。
だからここまで来ると勝手知ったる時分の庭、、みたいなものでしょう。
小川村から竹筒(ちくとう 竹遠は宛字)、九重、宮井(みあい 水合は宛字)、と、北山川に沿って下り、宮井から熊野川本流の方へ少し遡ると目指す熊野本宮になります。本宮のちょっと手前、木津荷(こつか)村の市太郎さん方で泊めてもらいました。

「紀伊山地の霊場と参詣道」が2004年7月に日本の12番目の世界遺産の指定を受けました。かなり広い地域ですので、大きくは次の4つのエリアに分かれています。
1. 伊勢路
2. 吉野・大峯
3. 熊野周辺(含む 大邊路・中邊路)
4. 高野周辺(含む 小邊路)

ここまでは泉光院の足跡を追って伊勢路を見て来ました。
これから先は熊野周辺の領域、熊野本宮、・熊野速玉大社・神倉神社・熊野那智大社・青岸渡寺・補陀洛山寺、そして秦の徐福の墓などを見て行くことにしましょう。
スポンサーサイト
20:29  |  街道周遊  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

新年おめでとうございます
ヨリックさんは戌年なのですね、お身体にご留意されて
ご趣味を楽しんでくださいね。
今年もよろしくお願いいたします。

以前 泉光院の足跡でも書かれていた伊豆がお気に入りの場所で
31日から2泊してきました。
コットン |  2018.01.03(水) 11:56 |  URL |  [コメント:編集]

病室から明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします\(^o^)/
まり姫 |  2018.01.03(水) 11:22 |  URL |  [コメント:編集]

■さくらさま

どうぞワタクシのブログで宜しければお使いください。使っていただくことは光栄なことでございます。
ヨリック |  2018.01.02(火) 20:59 |  URL |  [コメント:編集]

突然の訪問、失礼いたします。
私はこちら⇒b--n.net
でブログをやっているさくらといいます。
色々なブログをみて勉強させていただいています。
もしよろしかったら相互リンクをお願いできないでしょうか?
「やってもいいよ」という方はコメントを返してくだされば、
私もリンクさせていただきます。
よろしくお願いします^^
さくら |  2018.01.02(火) 20:39 |  URL |  [コメント:編集]

コメント:を投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメント:を表示  (非公開コメント:投稿可能)
 

▲PageTop

*Trackback

この記事のトラックバック URL

→http://azasosori.blog.fc2.com/tb.php/481-b3d70a1b

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック:

▲PageTop

 | BLOGTOP |